発足から環境保全活動の本格化(1999年〜2005年)
1999年に、田んぼの圃場整備による生物多様性喪失への危機感から、代表の森友敦子氏を中心に「赤ベンチョロの会」が発足しました。地元民話に登場するアカテガニの呼び名が会の名称となっています。2001年には行橋駅前に壁新聞「しっちょる行橋?」を制作・掲載し、地域への情報発信を開始。海の日の海岸清掃なども行われました。
2004年からは自然と文化の学習会を開始し、2005年7月18日には、姥が懐の景観が島式漁港道路建設のために埋め立てられることを知り、「行橋の自然と文化を愛する会」に名称を変更。海岸線の保全と漁港道路の一部変更を求める署名活動を展開し、同年9月27日には4500名の署名を集め、行橋市議会に陳情を行いましたが、否決されました。しかし、「配慮をもって」という文言を得ることに成功しました。

大学・専門家との連携と活動の広がり(2005年〜2008年)
2005年10月には九州大学島谷研究室と出会い、公共工事変更の難しさを認識しつつも、協力を得て活動を継続。同年10月から11月にかけて海の学習会を複数回開催し、地域の自然や文化の価値を再認識するきっかけとなりました。
2005年12月には添田町役場と英彦山神宮を訪問し、姥が懐周辺の工事に対する見解を伺い、行橋市とは道路の作り方・使い方について協議を重ねました。
2006年2月5日には「豊の国!地域づくりシンポジウム〜川と海の文化再発見〜」を開催し、修験道や環境哲学・宗教学の研究者を招いて姥が懐の景観の重要性を訴えました。このシンポジウムを機に、英彦山から姥が懐までのネットワークの重要性を認識し、会の名称を「豊の国海幸山幸ネット」に変更しました。

この頃から、海岸清掃や「姥が懐キッズ観察会」など、子ども向けの環境教育プログラムも積極的に実施。2007年1月には、姥が懐キッズの子どもたちと共に「第1回福岡県景観大会」で発表し、景観賞を受賞しました。
また、姥が懐の地権者である川上和子さんの運動への合流もあり、橋梁計画の一部変更が実現。2007年6月15日には「平成19年度全国まちづくり月間国土交通大臣表彰」を受賞し、活動が市内外で広く認められるようになりました。

2007年からは海岸清掃を毎月第2土曜日に実施するようになり、現在も継続されています。同年9月には「英彦山お潮井採り空間」の概念を提唱し、鳥瞰図「英彦山お潮井採りマップ」を制作。英彦山神宮やガイド、流域住民との連携を深めました。
2008年には、臨港道路建設が竣工。市民提言を重ねて工事変更が実現し、行橋市商工水産課からは「本会のおかげで良い工事が出来た」という評価を得ました。

広域連携と地域資源の発掘・発信(2008年〜2019年)
東九州自動車道建設に伴う京築連帯アメニティ都市圏推進会議の盛り上がりの中で、本会は広域連携の活動へと発展しました。2008年からは福岡県との協働事業として「豊の国景観ものがたり・まつり発信プロジェクト」を推進。英彦山のお潮井の森ウォークや、地域資源を活用した「豊前海キャンドルナイト」を継続的に実施するようになりました。

2009年には「豊の国空間エコミュージアム・地域のお宝発見プロジェクト」を開始し、京築地域のグリーンマップを制作。2010年からは京築応援団会報「豊の国けいちく」の発行に携わり、地域資源の発掘と人的交流を促進しました。
2011年には「京築つながり学とエコミュージアム」を提案し、京築ブランドとしての神楽や中世武士宇都宮氏の足跡を辿るツアーを実施。2012年からは「豊前之國修験めぐり塾」を五地区で開催し、修験道の精神を学びながら山歩きを行うツアーを企画しました。
「祓川・今川生きものマップ」や「豊前海干潟マップ」を制作し、京築地域内の小中学校へ寄贈するなど、環境教育にも力を入れました。
2013年からは「京築サルタヒコ養成塾」を開講し、地域をつなぎ伝えるガイドの育成に注力。養成塾のメンバーと共に「京築めぐりマップ」を制作し、「豊の国けいちくふるさとミュージアム」の理念を「修験と神楽とエコロジー」と定め、その活動を可視化しました。
2014年には京築かるたを作成し、京築圏内の全小学校に配布。京築神楽紙芝居の実演も開始しました。サルタヒコ養成塾では、古墳、修験、宇都宮、神楽、中津街道、水軍などをテーマにした多彩なツアーを実施し、地域の魅力を発信し続けました。
新たな課題への取り組みと活動の継続(2019年〜現在)
2019年からは、サルタヒコツアーは行橋市の太陽旅行に移行し、活動の幅を広げました。
2018年に祓川上流に伊良原ダムが完成後、2020年9月の高潮により姥が懐の窟が砂に埋まるという問題が発生。これに対し、本会が中心となって、英彦山神宮、地元校区、漁協、建設会社と協力し、「第1回姥が懐砂かき大作戦」を実施しました。この取り組みは、行政や地域住民、企業が一体となった保全活動の成功例となりました。
コロナ禍の影響で一部活動の中止もありましたが、2022年には蓑島小学校学童クラブと連携し、クロツラヘラサギ保護のための看板制作を行うなど、新たな形で環境教育を継続。
2023年と2024年には、沓尾地区区長の要望で行橋市が業者に依頼する形で「第2回姥が懐砂かき大作戦」が実施され、本会の働きかけが行政を動かす形となりました。

2023年10月には行橋市制70周年を記念し、地元神楽講を招いた「第16回神楽で祝おう豊前海キャンドルナイト」を盛大に開催し、地域コミュニティの活性化に貢献しました。
2025年2月には「月刊社会教育」に「姥が懐の20年」が掲載され、これまでの活動が全国的に注目されました。同年3月には「豊前海・里海・里川・里山学校『しっちょる?海の不思議・海の力講座』」を開催し、専門家を招いて海の重要性について学び、姥が懐の砂問題について市民が考える機会を提供しました。

そして2025年4月には、日本大学の海洋建築工学科と連携し、沓尾海岸姥が懐の砂の現状調査を実施。地元関係者も交えて砂問題について議論を深めるなど、専門的な視点を取り入れながら、今後も姥が懐の保全活動に取り組んでいきます。
豊の国海幸山幸ネットは、地域住民、専門家、行政、企業など多様な主体と連携しながら、自然環境の保全、地域文化の継承、そして持続可能な地域づくりに向けて活動を続けています。

